届屋ぎんかの怪異譚



「悪い妖を退治するのが、退治屋でしょう。朔は今日、どう思ったの? あのお狐さまは、悪い妖だと思う? 風伯は、悪い妖だと思うの? ……ねえ、朔が妖を退治するのは、誰のためなの?」



銀花の問いかけに、朔は答えなかった。だが、銀花はそれで構わなかった。



答える必要などない。


言葉が朔の心に届いて、朔がそれについて考えてくれれば、それで。



「……わかった」



ややあって、朔がぽつりと言った。



「おまえの言いたいことはよくわかったし、それについては認めるしかない。俺が今こうして運んでもらってるのは風伯の厚意だ。あの狐だって根は悪い奴じゃない」



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