届屋ぎんかの怪異譚



返答があるとは思っていなかったので、銀花は驚いて朔をまじまじと見つめた。


いつも不機嫌そうな顔をしている朔は、思慮深く真剣な眼差しを銀花に向けていた。



「今日見てみて……おまえのやり方は嫌いじゃない、と思った。だから、俺が江戸にいる間くらいは、おまえの考え方に付き合ってやってもいい」



いかにも渋々だというふうに言われ、悪いと思いながらも銀花は吹き出してしまった。



「あたし、朔はろくでなしの冷血漢だと思っていたけど、素直じゃないだけだったのね」



「銀花ちゃん、本当のこと言ったら朔が照れちゃうよ」



「斬るぞてめぇら」



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