届屋ぎんかの怪異譚



仏頂面で朔が刀に手をかけると、銀花はきゃあきゃあ言いながら猫目の後ろに隠れる。


猫目は慌てて朔に手を合わせて謝り、それを見て今様と二藍が呆れたように肩をすくめた。


すると。


「危ないからあんまり暴れないでよね。一応ここ、空中だよ?」



苦笑した風伯に言われ、朔にも「阿呆かおまえら」と言われ、二人とも大人しく空中に座り直した。


だがそれでもにやにやし続ける銀花に、朔は「気色悪い」と一言。



「乙女に向かって気色悪いって!」



「いつまでもにやにやしてるからだ」



「仕方ないでしょ? 嬉しかったんだもの!」



むっとした顔で銀花が言い返すと、朔が驚いたように目を見張った。



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