届屋ぎんかの怪異譚
「やっとわかってくれて、やっと仲良くなれたんだもの。にやにやするくらいいいでしょう」
いじけたような顔を作って言って、しかし銀花はすぐに柔らかく微笑む。
「ありがとうね、朔」
改まってそう言われて返答に困った朔は、「お、おう」とだけ答えると、にやにやする猫目を小突いた。
それからは誰も、何も言わなかった。風が鳴る音だけが聞こえる。
風伯が銀花たちに冷たい風が当たらないようにしてくれているので、風伯の作る風の繭の中は、秋のような涼しさだ。
風に座り込んで立てた膝の上に、銀花はそっと頭を乗せた。
その沈黙と心地よい温度が、銀花の疲労をじんわりと夜風に浮かび上がらせる。
だんだんとまぶたに力が入らなくなっていく感覚に身を任せ、銀花はゆるやかな眠りに落ちていった。