届屋ぎんかの怪異譚



「おまえがなんとかしろよ、退治屋なんだから」と、猫目の頭に器用に乗っかった今様がすかさず突っかかる。



「やだよ、鬼とか怖いし」


「おまえなぁ……」



つぶやいて、今様はがっくりと肩を落とす。


猫目の衿巻になっていた二藍が、今様の背を長い尾でさらりと撫でた。



朔はその様を横目に見ながら、あと少し残っていたご飯をかき込むと、椀の上に箸を置いて立ち上がった。



「ま、安心しろよ。すぐに首吊りなんかなくなる」



「え、どうして?」



朔を見上げて首をかしげたのは銀花だ。



「俺が――」と、朔が答えようとした、そのとき。



「――銀花!」



呼ぶ声に振り向くと、糺の家の戸口に風伯が立っていた。

そして、もう一人。


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