届屋ぎんかの怪異譚



「あなたは?」



銀花に問われて、風伯の隣に立っていた女は、淡い笑みを浮かべて会釈をする。


その体は、わずかに透けて彼女の後ろの街並みが見えていた。



『わたくし、あざみと申します。成仏できずにさまよっていたところを風伯さんに見つけていただき、届屋の銀花さまに頼ればいいとおっしゃられたので、こうしてまかり越しました』



幽霊のあざみはそう言って、深々と頭を下げた。



届屋の仕事だ、と理解したとたん、銀花の目が輝きだす。



「とりあえず、お話をうかがうわ! ここじゃなんだから、あたしの家に行きましょう」



あざみにそう言って、銀花は振り返ると、

「糺さん、ごちそうさま! おいしかったわ」

と一声かけて、喜び勇んで出て行こうとする。


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