届屋ぎんかの怪異譚



その背中に、糺が「銀花ちゃん、今日は橘屋の方はどうすんだー?」と叫ぶと。



「猫目が店番してくれるから、大丈夫!」


と、元気のいい声が返ってきた。



確認の意味を込めて糺が猫目を見ると、猫目はうんうんと頷く。



普段薬を半額で売る代わりに、猫目に退治屋の仕事がない日には、店を手伝ってもらっているのだ。



「さて、じゃあ俺もそろそろ仕事に向かう。ごちそうさん」



そう言って糺の家を出て行こうとする朔に、猫目は「俺もそろそろ店番するー」と言ってついて行く。



門前に見送りに来た糺に、猫目は笑って手を振って――前に向き直ると、その笑顔は消えていた。



「ねえ、朔」


声をかけると、猫目よりもわずかに背が高い朔は猫目を見下ろした。



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