届屋ぎんかの怪異譚
2
2
――――――――――
「あたし、この辺りってすごく久しぶりに来るわ」
通りの両側に並ぶ店を眺めながら、銀花は言った。
銀花の橘屋は日本橋の北側にある。
そして銀花が今いるのは、橘屋のある辺りと御城を挟んで真反対の麹町だった。
普段近所で大抵の用は済ませられるので、遠くないとはいえあまりこの辺りまで来ることはないのだ。
『以前にはいつ頃いらっしゃったのですか?』
すこし前を歩いて銀花を案内するあざみが、振り返って尋ねた。
「んー、そうね、ふた月は経つかしら。お店まで来られないお客さんに薬を届けに行ったの」
『ふた月前でしたら、わたくしもまだ生きていましたわ。もしかしたらすれ違っていたかもしれませんね』
あざみが言って、ふふ、と笑う。