届屋ぎんかの怪異譚



あざみの伝言を、銀花はまだ聞いていない。


保之助に会ったときに言う、と言って教えてくれないのだ。



あざみがどうして死んだのか、銀花はまだ聞いていない。

けれどあざみが死んで間もないことは確かだ。

保之助はきっと悲しんでいるだろう。


あざみの言葉を届けることで、保之助の悲しみも癒せたらいい。

そう、銀花は思った。



一度深く呼吸をして、よし、と呟くと、銀花はさがみ屋の戸をくぐる。



「ごめんくださーい……え!?」



入った途端に銀花が固まったのは、そこに知った顔を見つけたからだ。



そこにいたのは、さがみ屋の主人らしき厳つい顔立ちの老人と、その妻と思われる老女、そして――。



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