埋火
蒼祢もただ何も言うことなく立ち尽くし、総司をただじっと見つめていた。
蒼祢の目も総司と同じように、どこか悲しそうであった。
　ややあって、蒼祢はゆっくり歩き出し、総司の目の前でゆっくりと足を止めた。
「総司さま…あなたが新撰組の沖田総司様……」
蒼祢は静かにそう呟くと総司の目を見た。
総司はただ黙って下を向いた。
自分が『新撰組の沖田総司』であるということ。
そのことを今まで隠していた。
そんな罪悪感が心の中にあった。
そして、自分が新撰組であるということ。
それを蒼祢にだけはなぜか言えずにいたのは、自分が『人斬り』ということを知られたくなかったのだ。
それでも総司はいつか話さなくては、という気持ちとの二つの思いが葛藤していた。
結果的に知られるのであれば、自分の口から話すべきであった…
今更、総司は心の中で呟いた。
そんな総司を黙って蒼祢は見つめていた。その目は少し潤んでいるようであった。
総司は何も言えず、ただ黙り、蒼祢もただそんな総司を見つめて黙っていた。
そんな二人を夕日が照らし、二人の影はどこか悲しげであった。

　
< 16 / 52 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop