埋火
「左之、なぜ蒼祢さんを?」
「一度お会いしたことが。
ほら、この前の騒動のときにこの手傷を蒼祢さんが。」
そう言って手に巻きつけている包帯を見せた。
「最近、総司は通っているのですか?」
原田は蒼祢にそう問いかけた。
「はい。」
蒼祢のその返事に土方も近藤も顔色を変えた。
「総司!?」
土方が原田の顔を覗き込んだ。
「例の女性ですよ。」
原田は小声で呟いた。
「絶対に医者に行かない総司がねえ~」
土方はクスクスと笑い近藤を見た。
近藤も一緒になり笑い出した。
「総司が毎日のように通っていると聞きました。」
近藤が蒼祢にそう言うと蒼祢は口を開いた。
「ですが、ここ最近は来られていません。
総司様によろしくお伝えください。」
そう言うと蒼祢は頭を下げた。
「もう少しゆっくりしていかれたら。総司ももう時期かえって来るでしょうし。
なあ左之。」
近藤がそう言うと原田も「そうですよ。」と席を立とうとする蒼祢を止めた。
「ありがとうございます。ですが私はこの後も使いを頼まれておりますので…申し訳ございません。」
そう言って、深く頭を下げると席を立った。
蒼祢は屯所を出た。
「あっ…総司様。」
そこには総司が立っていた。
「こんにちは。」
総司は少し照れくさそうに笑い下を向いた。
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