埋火
蒼祢は山南と総司の仲がよかったことも、明里のこともすべて総司の口から聞いていたことであった。
一度、蒼祢が山南を診察したことがあった。
はじめて蒼祢をみた山南が「沖田君の。」と言ったことを蒼祢は今も覚えていた。
そして診察を終えた蒼祢に「彼を頼みますよ。」と笑顔で言ったことは今でも蒼祢の心に残っていた。
「早くしないと風邪をひきますよ。」
そんな総司の言葉に蒼祢ははっとした表情をうかべて飽きれた顔をした。
「またそうやって。」
とひとのことばかり……といわんばかりに蒼祢は笑っていた。
そんな蒼祢の笑顔に総司もいつもと変わらない笑顔を見せた。








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