埋火
鳥羽伏見の戦い

局長である近藤が墨染で狙撃されたのは慶応三年12月18日のことであった。
意外に重症で肩にヒビが入っており、血はとめどもなく出ていた。近藤は自室で横になり、苦痛に耐えていた。
心配と不安を浮かべながら近藤に声をかけたが、近藤は何食わぬ顔で
「なあに、大したこたあねえ。」
と言った。
しかし、近藤は土方と二人になると舌を巻いた。そして、近藤は低い声で呟くように口を開いた。
「歳、新撰組を頼む。」
近藤は『指揮権の移譲は済んだ』と静かに心の中で呟いて、安心すると、再び眠りについた。その後、近藤の体に高熱が襲った。
伏見にはろくな外科がいない。新撰組の馴染みの深い京の町医者、静岡はどうか、と考えたが、行くのには多少の時間と労力がかかる。幸い、大坂城には天下の名医がいると言われている。
近藤は大坂城へ治療するとのことで、伏見から幕府の御用船で大坂へ送られることになった。そして、衰弱しきっている総司も。
翌日、近藤と総司は護送された。
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