埋火
「いつもの薬ではないですね。」
いつもの薬というのは、土方が以前、売りに歩いていた『石田散薬』のものである。
「こりゃぁよく効くんだ。」
沖田は笑みを浮かべている。
最近ではまったくと言っていいほど沖田は薬を飲まなくなっていた。
薬と聞くと沖田は「私は元気なんですよ。こんな物を飲ませて病人扱いするのはやめて下さいよ。」と笑うだけで手に負えなかった。
しかし意外な事に、沖田はその薬をすぐに飲んだのだった。
市村も土方もただただ驚くばかりであった。
それから総司は布団の中へと入った。
「元気でしたか?」
呟くかのように総司はそっと一言、言って背を向けた。
「今日はいい天気みたいですね。」
しかし総司は話をすぐに変え部屋から幽かに見える空を見ていた。
「どこに行かれるんですか?」
その場から立ち部屋を出ようとする土方に沖田は声をかけた。
「少し出てくるだけだ。」
土方は階段を下り、屯所を出ると急に急ぎ足で歩き出した。
急に足を止めると土方は目を丸くした。
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