擬装カップル～私は身代わり彼女～

これが壁ﾄﾞﾝってやつ？

「君でしょ？覗いてたの。分かってるんだからね！」

両手首を掴まれて、壁に押し付けられる。

あぁ、これが壁ﾄﾞﾝってやつ？

細くてとても華奢な体だけど、樹くんは意外と力が強くて、はね除ける事が出来ない。

「何の事…？」

私がそう言うと、樹くんは唇が触れる寸前まで近寄る。

私の脳裏には昨日の光景がリアルに蘇り、顔が一瞬で真っ赤になる。

思わず目を反らして俯くと、下から除き込んで来る。

「惚けてもダメだよ！昨日あの場所で君の生徒手帳を拾ったんだからね。森風香さん」

昨日、図書室から慌てて逃げ出したから、生徒手帳を鞄から落としたんだ。

だって、あんな光景をみたら、慌てずにはいられないよ。

入学式で一目惚れした、渡瀬樹(わたせみき)くんが現国の桜木美鈴(さくらぎみすず)先生とキスしていたんだから…