愛してあげるから
「…どこ行くんです?」
「ミスズ、進行よろしく」
再び欠伸をしながら、條崎はフイと自分の席へ戻ってしまった。
戻ってきた條崎を、女子が黄色い声で迎えた。
本当條崎って、芸能人と同じ扱いだよね……。
進行任されちゃったよ…。
ワイワイ騒ぐクラスメイト達は、聞く耳を持たないだろう。
こんな状況の中あたしが進行するなんて、拷問以外の何物でもないと思う。
てか條崎、めんどくさいからってあたしに任せるなよ…。
本当、マジで困る。
「…し、静かにしてください……」
「早く帰りてー!」
「マジだりーんだけどー」
「零また勝ったの!?」
「零って本当ババ抜き強いよねー!」
…駄目だ。
あたしの声が、1番小さい。
さっきまで條崎と話していたあたしは、どこへ行った?
自分でも思うほど、キャラが違う。
気分は似たようなものなのに……。
どうしよう。
あたしだって早く帰りたいよ。
早く帰りたいなら、静かにしろよ!
…って言えたら良いのになぁ。