愛してあげるから






すると零は、あたしを求めるように、強く抱きしめた。

あたしを離さないとでも言うように。

…いや、違う。




離れて行かないで、と願うように。

零はあたしを、強く抱きしめた。




力がいつもに増して強くって。

あたしは息を吐く。

だけど、「離れて」とは言えなかった。





今あたしが離れてしまえば、

零は間違いなく、壊れてしまう。





零の抱える哀しみや苦しみを、あたしが受け入れてあげないと。






「零……ッ」





苦しくても良いの。

怖いと思っても良いの。

零の傍にいられれば、良いの。

それ以上は、何も望まないから。





大好き、零。

どうか零が抱える哀しみを、

あたしにも背負わせて……。







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