愛してあげるから
あたしは静かに寝息を立てる零を見た。
零って、完璧そうに見えて、実は完璧じゃないのかもしれない。
てか世の中に、完璧自体存在しないのかもしれない。
だって本当に完璧な人間など、この世にいないと思うのだ。
零だって、そう。
六冠王の名に相応しいけど、それは表だけ。
中身は脆いんだな……と思う。
完璧そうに見えて、完璧じゃない。
零はその典型なのかもしれないな。
あたしは少年のように幼い寝顔を見た。
寝顔は、こんなに幼いのに。
学校ではどんな女子にも手を出す、最低なプレイボーイ。
誰が一体、本当の零を壊したんだろう…?
誰もが羨む、“理想の王子様”を作り上げたんだろう?
ねぇ、零。
あたしじゃ駄目かな?
あたしだったら、零の本当の姿、見てあげられるよ。
“理想の王子様”でも、“六冠王”でもない零を。
本当の、“條崎零”を見てあげられるよ。
そう言える、自信があるよ。
零が見てくれたんだもん。
“逢坂美静”の仮面を被って毎日を過ごしていたあたし。
逢坂家の令嬢として、相応しい態度を取ってきたあたし。
だからあたしは、“優等生”だった。
だけど、零に会ってから、あたしは本当の“逢坂美静”でいられる気がするよ。
本当のあたしはサボるのが好きで、我が儘で。
令嬢の名には相応しくない、ただの一般人だった。