愛してあげるから
「……静かにしろよ」
あのよく通る声が聞こえて。
教室が、一瞬にして静寂に包まれた。
「静かにしてくださいって言っていたの、聞こえねーの?」
聞こえていたんだ…條崎には。
そのことに、あたしは少なからず嬉しいと思った。
「それ、零が言うことなのか?」
條崎をからかうように言ったのは。
杉本一誠(すぎもと・いっせい)くん。
目立つ金色の髪を持つ、條崎に続くプレイボーイ。
條崎とは幼馴染らしく、一緒にいるのを目撃し、女子がキャアキャア騒ぐのも見る。
2人が揃うと女子の黄色い声も2倍になるから、いつか学校が壊れるんじゃないかと思う。
「零も逢坂と同じクラス委員だろ?
そこで指示するなら、前に行けば良いじゃねーかよ」
ご、ごもっとも!
あたしは心の中で拍手を送った。
「……めんどくせーから、前には出ない」
そう言いながら欠伸をする條崎。
「逢坂に任せっぱなしかよ」
苦笑いをする杉本くん。
キャアキャア騒ぐ女子。
……進めたいんだけどなぁ。