愛してあげるから
最終章
理想の 零side
☆☆☆☆
「初めまして。
僕は杉本一誠です。
よろしくね、零くん」
「よろしくね」
俺らは握手を交わした。
小さな、どこにでもある団地。
俺らは近くの公園で、毎日のように遊んでいた。
生まれた時から隣にいた一誠。
一誠と遊ぶのが、俺は何よりも好きだった。
だから、嫌だったんだ。
玄関に頑丈な南京錠を付け、出掛けて行く母親が。
「良い?零。
外へ出掛けちゃ駄目よ」
「何で?」
「外は危険だからよ。
いつ知らないオジサンが来るかわからないでしょ?」
母親は、夫であり俺の父親の存在に怯えていた。
父親は何か嫌なことがあるとお酒に逃げ、酔っぱらうと俺らに暴力を振るうような人だった。
俺が生まれる際に離婚したらしいけど、時々父親はお金を借りに家へやってきた。
だから時々、俺の体には痣や切り傷が増えて行くことがあった。