愛してあげるから
後日。
俺はギリギリ救出された。
隣に住んでいた一誠が、俺の名前を呼びながら扉を叩いていたのを心配した一誠の母親が、警察に通報してくれたから。
ベッドの横で、一誠は泣いていた。
「助けられなくて、ごめん」ってずっと謝っていた。
母親は行方不明だし、父親は離婚しているし。
引き取り手のいなくなった俺は、母親の姉だという人に引き取られた。
伯母さんは高級ブランドの社長で、家は豪華。
だけど、決して俺を愛してなどくれなかった。
家は毎晩パーティーを開いてうるさい。
法律違反のクスリを売買している人も来て、それを吸って狂った人が集まっていた。
我を忘れた人に、帰って早々殴られたこともある。
俺はいつしか、家に帰らなくなっていた。
補導されないよう自分を隠し、建物と建物の間で室外機の上に座りこみ、多すぎるお小遣いで買った、大して好きでもない珈琲を飲んだ。
あんな狂った家に、帰りたくなんてない。
俺を必要としない家になんて、帰りたくない。
どうしたら、俺は必要とされる?
捨てられない?
閉じ込められない?
俺は勉強を繰り返した。
毎朝ジョギングをして、体力もつけた。
成績が良くなれば、必要とされる?
スポーツ万能になれば、捨てられない?
どうすれば良い?
何をしたら良い?
どうしたら、
俺を、愛してくれる?