愛してあげるから
「……なるほど、ミキがそんなことを」
「うんっ……」
あたしの涙を拭った零は、ふっと笑った。
……いつかあたしに見せた、黒い笑み………。
嫌な予感しかしない。
「零?」
「来い」
グイッとあたしの腕を引いた零は、スタスタ歩きだした。
零が堂々と歩くのは、校門から校舎へ続く道。
最初、キャアキャア騒がれている零のこと、あたしは嫌いだったんだよね。
きっと、誰にでも人気者な零が、あたしは羨ましかったんだと思う。
それが、零の裏の気持ちを隠す術だったということに気が付かないで。
あたしの手を引きながら、零は堂々と歩く。
あたしも釣り合うよう、出来る限り堂々と歩いた。
隣の零があたしを見て、笑ってくれた。
零を毎朝見ることで朝が始まる女子も、零に憧れている男子も、成績優秀の零を学校の誇りだと考えている教師たちも。
誰しもが、驚き、静まり返っていた。
ただ1人だけ、杉本くんだけが両手に女子を抱えながら、ニヤニヤと笑っていた。
零は突然、立ち止まった。