愛してあげるから







あたしが食べ終わると、リビングの隣にある部屋から、泣き声がした。

……聖(せい)くんが、また泣いているんだ。




「美静ちゃん、食器置きっぱなしで良いわ」

「…良いです、持って行きます」

「……そう?
ありがとう美静ちゃん」




玲愛さんは笑うと、聖くんの元へ行った。






玲愛さんは、あたしの母親。

だけど、実の母親じゃない。

父親の再婚相手だ。

聖くんは、お父さんと玲愛さんの息子。

あたしにとっては義理の弟だということになる。




あたしのお母さんは、中学卒業と同時に亡くなった。

元々体の弱かった人だからね。




お母さんが亡くなったというのに、お父さんは嬉しそうだった。

お父さんはお母さんが生きているころから、玲愛さんと付き合っていたのだ。

お母さんが亡くなって、お父さんは玲愛さんと即結婚した。



玲愛さんは逢坂家の令嬢。

お父さんは自分の名字を捨て、あたしと一緒に逢坂の名字にした。

逢坂の娘だといっておけば、就職に有利だからというけど。

あたしはお母さんと同じ名字が良かったと、今でも思い、逢坂を受け入れられない。



だけどあたしの意見なんて聞かなくて。

勝手にあたしの名字を逢坂に変え、転校した。

……あたしが転校してきた理由は、それ。







< 16 / 135 >

この作品をシェア

pagetop