愛してあげるから
あたしが食べ終わると、リビングの隣にある部屋から、泣き声がした。
……聖(せい)くんが、また泣いているんだ。
「美静ちゃん、食器置きっぱなしで良いわ」
「…良いです、持って行きます」
「……そう?
ありがとう美静ちゃん」
玲愛さんは笑うと、聖くんの元へ行った。
玲愛さんは、あたしの母親。
だけど、実の母親じゃない。
父親の再婚相手だ。
聖くんは、お父さんと玲愛さんの息子。
あたしにとっては義理の弟だということになる。
あたしのお母さんは、中学卒業と同時に亡くなった。
元々体の弱かった人だからね。
お母さんが亡くなったというのに、お父さんは嬉しそうだった。
お父さんはお母さんが生きているころから、玲愛さんと付き合っていたのだ。
お母さんが亡くなって、お父さんは玲愛さんと即結婚した。
玲愛さんは逢坂家の令嬢。
お父さんは自分の名字を捨て、あたしと一緒に逢坂の名字にした。
逢坂の娘だといっておけば、就職に有利だからというけど。
あたしはお母さんと同じ名字が良かったと、今でも思い、逢坂を受け入れられない。
だけどあたしの意見なんて聞かなくて。
勝手にあたしの名字を逢坂に変え、転校した。
……あたしが転校してきた理由は、それ。