愛してあげるから
あたしは食器を割らないよう気を付けながら洗う。
逢坂家の当主となったお父さんは、現在海外出張中。
なので今逢坂家にいるのは、あたしと玲愛さんと聖くんだけ。
そんな玲愛さんもあたしをいまだ「美静ちゃん」とよそよそしい。
そういうあたしも、「玲愛さん」なんだけどね。
玲愛さんは聖くんのお世話につきっきり。
あたしと話す機会なんてないから、あたしに友達がいないことや、クラス委員ってことも知らない。
もっと言えば、あたしの成績も知らないだろう。
逢坂を継ぐのは聖くん。
女のあたしは、逢坂を継がないのだから。
だからあたしの成績なんてどーでも良いんでしょ?
あたしは忘れるため、首を振った。
沈んだ気持ちになっちゃ駄目。
今日は星空観賞なんだから。
思いっきり、純粋な星空を楽しまないと。
きっと楽しんでいるのはあたしだけ。
條崎も女子たちと話すだろうし。
まともに観賞する人は、居ないと思う。
別に良い。
誰かと一緒に楽しもうとは、思わない。
あたしは1人で良い。
友達も彼氏も、そんな恋愛じみたことはいらない。