愛してあげるから






あたしは食器を割らないよう気を付けながら洗う。



逢坂家の当主となったお父さんは、現在海外出張中。

なので今逢坂家にいるのは、あたしと玲愛さんと聖くんだけ。

そんな玲愛さんもあたしをいまだ「美静ちゃん」とよそよそしい。

そういうあたしも、「玲愛さん」なんだけどね。




玲愛さんは聖くんのお世話につきっきり。

あたしと話す機会なんてないから、あたしに友達がいないことや、クラス委員ってことも知らない。

もっと言えば、あたしの成績も知らないだろう。

逢坂を継ぐのは聖くん。

女のあたしは、逢坂を継がないのだから。

だからあたしの成績なんてどーでも良いんでしょ?









あたしは忘れるため、首を振った。

沈んだ気持ちになっちゃ駄目。

今日は星空観賞なんだから。

思いっきり、純粋な星空を楽しまないと。




きっと楽しんでいるのはあたしだけ。

條崎も女子たちと話すだろうし。

まともに観賞する人は、居ないと思う。




別に良い。

誰かと一緒に楽しもうとは、思わない。



あたしは1人で良い。

友達も彼氏も、そんな恋愛じみたことはいらない。







< 17 / 135 >

この作品をシェア

pagetop