愛してあげるから







「おはよう」




低く、よく通る声。

たった4文字なのに、定番中の定番の挨拶なのに。

それだけで女子は叫ぶ。

…喉乾かないのかしら?





彼。

條崎零(じょうさき・ぜろ)。

変わった名前の彼は、転校してきてまだ1週間も経っていないあたしでもわかるほど、有名すぎる人だ。

王子様と言われているけど、またの名は六冠王(ろっかんおう)。





六冠王の名を持つ彼は、その名の通り、六冠を持っている。



1つ目の冠は、その容姿。

神様の芸術品と見間違うほど整った顔立ちに、モデル並みのしなやかな体躯。

常に眠そうにしていて、垂れ下がった目元を細めて笑う姿に、誰もが心を奪われる…らしい。

あくまで噂だけど、現状がこれだ。

単なる噂ではないと思う。




2つ目の冠は、成績。

無断遅刻や欠席、サボリが多い彼だけど、成績は軽々1位をとっている。

この学校は芸能人や財閥の人間など、殆ど出席出来ない生徒が通うことが多く、内申より成績重視。

彼が先生たちにも人気なのも、きっとそのせいだ。

…女の先生とかには、容姿目当てで人気なんだろうけど。




3冠目は、スポーツ。

眠そうに欠伸ばかりしているくせに、とても身軽で。

先生が誰か上手い人にやらせる時、その授業に彼が出ていれば、必ず彼が指名されるほど。

初めてのことであっても、器用に出来てしまうのだ。





……本当、羨ましい。

彼ほどあたしも器用だったら、すぐさま友達が出来たのに。







< 2 / 135 >

この作品をシェア

pagetop