愛してあげるから
「おせーよ」
「悪ぃ」
一誠と並んで歩きだす。
「お前今日どうするんだ?」
「…んー、どうしようか」
「どーせ家に帰らないんだろ」
「……バレバレってわけか」
「当たり前だろ。
俺はお前の幼馴染だぞ」
「隠し事や嘘が通じねー幼馴染だな」
俺が笑うと、一誠も笑った。
「そういえば零、見たぜ」
「何を」
「零にも地味子に手ぇ出す趣味があったとはな」
「地味子?」
「アイツだよ、逢坂」
ミスズ、か。
まぁミスズは黒髪を三つ編みにして、今時信じられない瓶底眼鏡をかけている。
ぐるぐる、と眼鏡が渦を巻いていて。
ミスズが転入してきた時、誰しもが「キモッ」とか「ダサッ」とか言っていた。
「あの子抱きしめているの、俺見たんだぜー」
「お前だけか?」
「ああ。
良かったな、見たのが俺で。
ミキたちが見ていたら、マズかったんじゃねーの?」
ミキは、俺を追うファンクラブの会長だと自称する女。
俺のファンクラブがあるのかって、驚いたのを思いだした。