愛してあげるから
あとの3冠は…正直、あたしには関係ないことだ。
あたしは踵を返し、校内へ向かった。
そもそも、彼を待つ女子の軍団で通れなかったんだっつーの。
芸能人の出待ちしているんじゃないのにさー。
あたしはもう1度、溜息をついた。
あたしがこの学校に転入してきたのは、3日前。
広すぎる校舎内の案内図を、あたしはまだ手放せていない。
人見知りのあたしに、友達はいない。
だから友達同士で仲良く話す休み時間も、あたしにとっては暇でしかない。
持っている短編小説は読み終わっているしな…。
寝る、にも…この状況じゃ寝れない。
「ねぇ零、今度あたしの家来ない?」
作ったような甘えた声を出す女。
気持ち悪くて、思わず身震いをした。
「ミキの家、この間行っただろ」
「また来てよォ」
「駄目。
俺、1度寝た女とは寝ないの。
ミキとは1度寝ただろ?」
クスッと聞こえる笑い声。
その声を聞くたび、あたしはイライラする。