愛してあげるから
「好きなわけ?逢坂のこと」
好きなわけ?
そう聞かれ、思わず黙り込む。
好き?
…よくわかんね。
俺は人を好きになったことがない。
だから、好きがわからない。
「…ミスズに彼女になれ、とは言ったけど」
「はぁ!?」
住宅街で思いっきり一誠は叫ぶ。
「うるせっ」
「あ、ああ…悪ぃ。
てか、質問が2つある!」
「…何」
「逢坂って下の名前、ミスズって言うのか!?」
「そうだけど。
てか転校してきて挨拶した時、そう名乗っていただろうが」
黒板に担任が漢字で名前を書くとかしないから。
ミスズは名前を自分で言った。
漢字は、座席表を見て知った。
「確か逢坂って、下の名前“美しい”に“静か”って書くんだよな」
「ああ」
「あれでミスズって読むのかー。
へぇ、初耳だな」
まぁ、普通は読めねーだろうな。
俺がミスズって初めて読んだ時も、ミスズは驚いていたし。
一発で読める奴に、会ったことねーんだろうな。
「質問2つ目!
何で彼女になれ、なんて無謀なこと言ったんだよ!
お前馬鹿じゃねぇの!?」
俺は一誠の頭をはたいた。