愛してあげるから
するとあたしは。
入り口の上にある屋根の上に行ける梯子を見つけた。
…あの梯子上ったら、もっと近くで見られるんじゃない?
生憎風は強くない。
大丈夫、紙が飛んでいく心配はない。
あたしは紙の束を片手に、梯子を上り始めた。
そして上に束を置き、一気に上る。
上って再び紙の束を抱いた所で。
……アイツの存在に気が付いた。
「……條崎、零………」
何でコイツが、屋上になんているの?
最悪、何で会うんだろう。
あたしは折角上ったのに、梯子を降り始めようとした。
「……ミスズ」
あの、綺麗な声にあたしの足は立ち止まった。
條崎の声には、人を惑わす力があるんだと思う。
それほど、條崎の声は綺麗だ。
「おいで」
行きたくない。
…そんな自分の意思に反して。
あたしの足は、條崎の傍に寄って行った。