愛してあげるから
「……わかってんだろ、お前だって」
「当たり前だろーが……」
「んじゃこれやるから、行ってこい」
ポケットから一誠が取り出した、細長い2枚の紙。
「水族館……?」
「ああ。
逢坂美静を誘って行って来い」
「何でミスズを……」
「そこで思い切り、逢坂美静を振って来い」
「…………」
「このままだと、逢坂美静は確実に零に惚れる。
惚れる前に、零から振ってやれ」
「……わかった」
俺は頷いて、ポケットにしまった。
「そういや零、次の授業出るのか?」
「…出るわけね―じゃん、あんなつまんねぇ授業」
「なるほど。
じゃあ俺は次も、起きてねーといけねーわけだ」
「……悪ぃな」
「良いって。
どーせ昨日も、帰った後寝てねーんだろ?」
「……寝れるわけねーじゃん、あの家で」
「今日も来て良いから。
遠慮とかするなよ」
「ありがとう………」
一誠が屋上を出て行くのを見送り、俺は再び瞼を閉じた。