愛してあげるから






「ではお客様、こちらへどうぞ」




女の店員さんについていく。

條崎の所に行くのかな?

…何だか緊張しちゃうな……。






しかし連れて来られたのは、鏡と椅子が並んだ、美容院みたいな所だった。

よくわからぬまま、座らされる。




「お客様、視力はどれくらいですか?」

「視力ですか?
1、0ですけど……」

「1、0?
では何故、眼鏡をかけているのですか?」





そう、この瓶底眼鏡はダテ眼鏡なのだ。



あたしが地味な格好をしている理由は、“逢坂家の令嬢”と思われないためとは言ったけど。

逢坂家の当主…お父さんのことは有名で、顔写真も多く出回っている。

小さい頃からお父さんに目元が似ていると言われ続けてきたあたしは、目元を隠すため眼鏡をかけるように下のだ。

瓶底眼鏡を選んだのも、ぐるぐるで目元を隠すため。





「ダテ眼鏡ですから……」

「では、外しても大丈夫ですか?」

「……はい」




今日は、デートだもん。

やっぱり相手が好きでなくても、可愛く決めたくなるからね……。








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