愛してあげるから
「社長ッ!」
店員さんの驚いた声を聞いて、あたしは現実へ戻った。
振り向くと、玄関口には派手な格好をしながらも美人さんが立っていた。
真っ赤なロングドレスに、大粒のダイヤモンドのネックレス。
お金持ちなことは、一目瞭然だった。
「どうされたんですか社長!」
「店回りよ」
眼鏡越しに社長さんは、店内を見渡す。
化粧も薄めで、茶色い髪も巻かれて綺麗だった。
こんな美人な人がいるんだ……。
社長さんはあたしを見て、近づいてきた。
そしてあたしの巻かれている髪に触れた。
「とても綺麗だわ。
あなたがやったのかしら?」
「いえ、これは―――…」
店員さんがやってくれたんです。
そう言おうとしたけど、彼によって遮られた。
彼―――條崎は、パシッと社長さんの手をはたいた。
な、何しているの!?
この人このお店の社長さんなのに!