愛してあげるから
「そういえば條崎!」
何も答えないまま店員さんと見つめ合う條崎の手を、あたしは小さく引っ張った。
このままだと、店員さんが條崎に惚れてしまう。
「どうしてあたしをこのお店に?」
「は?
ミスズがダサかったからに決まっているだろーが」
「ダサい?」
「ミスズ本当可愛いのに。
何で変装みたいに地味な格好しているんだよ」
「………」
1番触れられたくない話題になって、あたしは俯いた。
「本当のミスズを見るためにデートに誘ったって言うのに、ミスズは相変わらずダセェ格好しやがって。
だから、連れてきたんだよ」
本当のあたしを、見るために……?
「どうだった……?」
「俺の思った通り。
ミスズは華奢なんだから、その体躯を生かすべきだと思ったんだ。
ワンピースにするよう頼んだのも、俺なんだ」
「そうなんだっ……」
「じゃあ、デート行くか」
「えっ?
お会計は!?」
ていうかあたし、こんな高そうな洋服買えるかな…?
普段お金使わないから、今まで貯めてきたお金を持ってきたけど。
高級ブランドの洋服を軽々と買えるほど、お金はない。
いくら逢坂家の令嬢って言いながらも。
本当のお嬢様は玲愛さんだから。
あたしはただの、一般の娘だから……。