愛してあげるから
☆零side☆
俺らは水族館へは行かず、海へ行くことにした。
海には幸い誰もいなくて。
階段に座りこんだ俺らは、途中の自動販売機で買った飲み物を片手に、ミスズの話を聞くことにした。
最初、ミスズは泣いていなかった。
だけど徐々に、嗚咽交じりに過去を話し始めた。
母親が亡くなったこと。
父親が浮気相手と結婚できると、喜んでいたこと。
勝手に逢坂の名字にされ、転校したこと。
新しい母親―――玲愛さんと父親の間に出来た義理の弟のこと。
今では玲愛さんも、ミスズより弟を構っている、と。
玲愛さんもお父さんも、自分には興味がないこと……。
涙で目を真っ赤に腫らしたミスズを、俺は思わず抱きしめた。
小さいくせに、華奢なくせに。
ミスズは誰よりも哀しい思いを背負っていたことに。
「どうせ…卒業とかで別れたら、皆あたしのことなんて忘れちゃうんだもん……。
前の高校の友達もね、連絡するよって言ってくれたのに…今では何も連絡してくれないの。
あたしからしても、返信は来なくて……。
ずっとそうだったの…。
小学校や中学校を卒業した時も、そう。
仲良かった友達も、誰も連絡来ないの。
そんなの、寂しいんだもん…。
寂しい気持ちになるのなら、あたしは、友達なんていらない。
辛い思いなんて……したくないっ………」
いつも強く見えたミスズが、何だか弱く見える。
強がることで、弱さを隠していたんだ。