愛してあげるから
駄目だ。
振れない。
俺の口から、「別れよう」なんて言えない。
ミスズが傷つかないうちに。
ミスズが泣かないうちに。
……別れないと………。
俺が、
“あの頃の俺”に戻らないように―――…。
「……零………?」
「ミスズ」
「零…何でそんなに、寂しそうなの?」
「……何でだろーな………」
女なんて、テキトーに扱えば良い。
好きだと囁いて、体を重ねれば。
それだけで満足だと思っていた。
六冠王の名を持っているんだ。
だからそれに相応しくならなくてはいけない。
六冠王と言う名の鎖に縛られることに気が付いてはいたけど。
俺がその鎖から抜け出す方法を、知らなかったから。
別に良いんだ、このままで。
最低の俺で、良いんだ。
そうしたら俺は、“あの時”に戻らねーと思ったから。