愛してあげるから
「美静ちゃん?
どうしたの?顔が真っ赤よ」
振り向くと、玲愛さんが手にお盆を持って立っていた。
「あっ……何でもないです!」
「そう?
なら良いんだけど…。
これ、お茶とお菓子よ。
零くんのお口に合うかわからないんだけどね?」
「あ、ありがとうございます!」
あたしはお盆を受け取った。
夕焼けのような明るい色の紅茶と、クッキー。
クッキーは玲愛さんの手作りだ。
「ところで驚いたわ。
美静ちゃんにあんなかっこいい彼氏がいたなんてね」
「零とは、今日付き合い始めたんです」
「あら、今日なの?
美静ちゃん幸せそうだから、前からかと思っていたわ」
「…幸せそう、ですか……?」
「ええ。
美静ちゃん、お母さんを亡くしてから、笑うことなかったでしょう?」
…確かに、そうかも。
お母さんを亡くしてから、あたしは変わった。
笑わなくなったし、友達もいらないと思い始めた。
でも、零に会ってから、喜怒哀楽を表に出している気がする。
零の笑顔に、体温に、あたしは信頼を寄せているのだろうか?