新婚の定義──嘘つきな君と僕──
「ダディの頼み、聞いてくれるかい?」

ヒロの期待のこもった熱い瞳に圧倒されて、レナは思わずうなずいた。

「よっしゃ、決まりだな。」

(あっ!しまった…つい…!!)

「それじゃあ早速練習を…。」

「いや…あの…。」

レナが慌てて取り消そうとすると、ヒロはニヤリと微笑みながらレナを見た。

「ダディの頼み、聞いてくれるよね?」

「ハ、ハイ…。」

(え、笑顔で威嚇された…!!)

ヒロは嬉しそうに笑ってレナの頭を撫でた。

「いい娘を持って幸せだな、オレは!いい子だなぁ、レナは。」

(怖いダディ持っちゃった…。)

「あ、この話は、タクミ以外のみんなには秘密だから。」

「タクミくん以外…?」

「今回の曲、作詞がタクミなんだよ。みんなには誰が歌うか知らせずに、曲のレコーディングだけやらせるから。」

「そうなんですか…?」

「だから、ユウにも秘密ってことで。」

「わかりました…。」

(ホントに私でいいのかな?)

「音源渡すよ。スマホ貸して。」

「あ、ハイ…。」

ヒロはパソコンからスマホに曲のデータを送ると、自分のスマホを取り出した。

「連絡先、交換な。」

「ハイ…。」

嬉しげに連絡先を交換すると、ヒロはレナにスマホを返した。

「ちゃんと名前のとこに、ダディって入れとくように。」

「ふふ…わかりました、ダディ。」

その後、レナは次にスタジオで会う約束をして、優しいダディと別れ会議室を後にした。


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