新婚の定義──嘘つきな君と僕──
レナは帰宅すると、いつも通りに夕飯の支度をして、ユウの帰りを待った。

さっき帰り支度をしたユウを見掛けたはずなのに、ユウはなかなか帰って来ない。

(きっと、ケイトと一緒にいるんだ。)

おおかた、ケイトの強引な誘いを断れないで、バーにでも行ったのだろう。

(また週刊誌に写真載せられても、今度は助けてあげないんだからね。)


レナは一人で食事を済ませ、シャワーを浴びて缶ビールを手に、自分の部屋に入る。

ヒロからもらった曲を聞こうと、スマホにイヤホンをつけると、ビールを飲みながら曲に耳を傾けた。

(これ、私が歌うの?)

タクミが作詞したと言うその歌詞は、どことなく自分に似ていて、苦笑いが漏れた。

(さすがタクミくん…。)

`ALISON´の曲の作詞の多くを手掛けているだけあって、タクミの言葉には無駄がない。

的確に心の奥の部分をわしづかみにされるような感覚に、レナは息を飲んだ。

(成り行きとは言え引き受けちゃったんだし、こうなったら、なんでもやってやる…。)

レナはベッドに横になり、何度もその曲を聞きながら、眠りについた。


“あなたのすべてが知りたいの

たとえ心を切り裂かれても

あなたのすべてが知りたいの

胸の痛みに泣き疲れても”


眠りの中で、レナは何度も口ずさむ。

(私は…私の知らないユウのすべてを、受け入れられるの…?)





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