新婚の定義──嘘つきな君と僕──
ユウはケイトの強引な誘いを断りきれず、1杯だけと約束をして、バーに来ていた。

1杯だけの約束のはずが、もうすでに4杯目のビールが半分ほどなくなっている。

「ケイト、そろそろ帰ろう。」

ユウが腕時計を見てケイトの肩を叩く。

去年のクリスマスにレナからプレゼントされた腕時計の針は、もう11時を回っていた。

(また遅くなっちゃったよ…。)

「嫌。まだ帰らない。」

「だってほら、もう遅いし。」

ユウがケイトに時計を見せると、ケイトはユウの左手に光る結婚指輪をじっと見た。

「だってユウは…あの子の所へ帰るんでしょ?そんなの嫌…。」

「あのさ…オレは、彼女の夫だから。妻の所に帰るのは当たり前だろ?」

「嫌…。なんでそれが私じゃないの?」

「それは…オレが好きなのは、彼女だから。」

「ユウはひどいよ…。あの子のことを想いながら…何度も私を抱いてたのね…。ユウも私を好きなんだと思ってたのに…。」

「ごめん…。オレは…ずっと、彼女のことを忘れたことなんてなかった…。」

「もういい、聞きたくない。」

ケイトは立ち上がって、拳でユウの胸をドンと叩いた。

「私の方が好きだって、必ず言わせてみせるから。」

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