新婚の定義──嘘つきな君と僕──
「ううん、大丈夫。どうせ、今日も遅いと思うし。食事も要らないと思うから。」

レナは返事をしてから、ふと考える。

「やっぱり、車置いて帰る。飲みに行こう。」

「いいのか?」

「私にも、たまには外で飲みたい時もある。」

「レナがそう言うなら、まぁいいか。」

レナは相川の行きつけのバーの地図をスマホに送ってもらい、歩いてそのバーに向かった。


(たまには外で飲んで、気晴らしでもしよう。ユウは良くて私はいけないなんて、おかしいもんね。どうせ、今日も遅いんでしょ…。夕飯作ったって、どうせ無駄になるんでしょ…。どこで誰と何してるかもわからないユウを、一人で待ってる私も…バカみたい。)

歩きながら、ヤケ気味の思いが頭をぐるぐる巡る。

夕陽が沈んで薄暗くなり始めた街の景色が、じわりとにじんだ。

(あんなに、二人で幸せになろうって約束したのに…。もう他の子のところには行かないって…約束したのに…。婚姻届け書く時…レナには嘘つかないって言ったくせに…。ユウの…嘘つき…。)

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