新婚の定義──嘘つきな君と僕──
相川と待ち合わせをしたバーに着くと、先に来ていた相川がレナを見て軽く右手を上げた。

「急に悪かったな。」

「ううん。」

「何飲む?」

(いつもは白ワインかビールが多いけど…今日はなんとなく、いつも飲まないような物がいいな…。)

「相川くん、何飲むの?」

「ジントニック。」

「じゃあ、私もそれ。」

ジントニックと、料理を何品かオーダーして、相川はタバコに火をつける。

(ユウのタバコとは違う匂いがする…。)

「タバコ…いやだったか?」

流れて行くタバコの煙をじっと見つめるレナに気付いた相川が尋ねると、レナは静かに首を横に振る。

「大丈夫…。」

運ばれて来たジントニックで乾杯すると、レナはグラスに口を付け、ジントニックを一口飲んだ。

「飲めるか?」

「大丈夫だよ。私、成人してるから。」

「おかしなこと言うね、オマエ。」

「そう…?」


カウンターの上に料理が並ぶと、バイト先での思い出話をしながら、ゆっくりとお酒を飲み、食事を楽しんだ。

(誰かと夕飯食べるの…久し振りかも…。)

隣にいるその相手がユウでないことに違和感を覚えるものの、今日は部屋で一人、冷めた料理を眺めながらユウを待たなくてもいいんだと、ほんの少し寂しさが和らぐ気がした。

(ユウとじゃなくても…笑えるもん…。)

レナは2杯目のジントニックを飲み干した。

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