新婚の定義──嘘つきな君と僕──
仕事が休みだったレナは、ヒロと約束をしていたスタジオを訪れた。

`ALISON´の事務所のスタジオではなく、ヒロがよく使っているレコーディング設備のあるスタジオだった。

「おはよう。」

「おはようございます。」


夕べ泣き腫らした目を見られないように、レナは今朝起きてシャワーをした後、しばらく目元を冷やした。

かなり腫れがひいたと思ったのに、ヒロはレナの顔を見た途端、苦笑いを浮かべる。

「また泣いてたのか。」

「えっ…。」

「隠したってバレバレだって。」

「…ダディには、かなわないですね…。」

レナはうっすらと笑いを浮かべた。

ヒロはスタジオの頑丈な防音扉を閉めて、レナにイスに座るように促した。

「で、どうしたんだ?話してみな。」

ヒロは缶コーヒーをレナに手渡す。

「私…ユウに、嘘をつきました。」

「嘘?」

ヒロは怪訝な顔をする。

「ユウを不安にさせないためじゃなくて、傷付けるための嘘です…。付き合い始めた頃に、離れていた間の、ユウの知らない私の過去をすべて打ち明けていたのに、それが嘘だったって…有りもしないことを話して…どっちの私を信じるのって、言いました…。」

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