新婚の定義──嘘つきな君と僕──
ヒロは黙って缶コーヒーを飲む。

「ユウは、自分の知られたくない過去は…私がなんにも知らないと思って隠そうとするくせに…私には自分の知らない私の過去を聞くから…知りたくもない相手の過去を知ってしまった時に、どれだけ傷付くのかを知って欲しくて…酷い嘘をついたんです…。」

「それで、レナの心は晴れたのか?」

レナは静かに首を横に振る。

「嘘をついたのは私なのに…ユウへの想いを自分で踏みにじってしまったようで、悲しくなりました…。」

「ユウを傷付けるつもりが、自分のことまで傷付けちまったか…。」

「ハイ…。」

レナの目から、ポトリと涙が落ちた。

「ずっと、自分に嘘をついてきたんだろ?ユウの何を知っても平気だって。自分で自分の傷口を広げて血を流して…。それでユウは?」

「わかりません…。でも…私のついた嘘を信じてると思います…。」

「バカだね、オマエは。これ以上傷付いてどうするんだよ。」

「ホントにバカだと思います…。もう、一人で不安になって泣くのはやめようって…ユウがその気なら、私も騙されたフリをして、嘘をつこうって…。嘘をつくのがこんなにつらいとは、思わなかった…。」
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