新婚の定義──嘘つきな君と僕──
「レナはいつも通り過ごすだけでいい。何事もなかったような顔して、普段通りの生活してればいいよ。ユウに向かって、当たり前に話したり笑ったりしてな。それだけでユウは戸惑うし悩むし迷うし、いろいろ考える。これまでどれくらいレナを不安にさせて、そのたびにどんな思いでレナが嘘を重ねてきたのか、ユウが自分で気付かないとなんにも解決しないんだよ。」

ヒロがニヤリと笑う。

「あー、なるほど。そういうことなんだ。」

タクミが納得したような顔で声を上げる。

「タクミくん、私の話聞いてないのに…ダディの言った言葉の意味がわかるの…?」

「んー、まぁだいたいなんとなく?」

(タクミくん、怖すぎる…。)

「オレはあーちゃんの味方だよ?」

「あ、ありがと…。」

ヒロがコーヒーを飲み干して、手を叩く。

「よし、じゃあやるか。」

「あーちゃんの歌、楽しみ。」

「いや…あの…あんまり期待しないで…。」

「って言うか、いつの間にかヒロさん、あーちゃんのことレナって呼び捨てだし。あーちゃんはヒロさんのことダディって呼んでるし。」

「いいだろう、オレとレナは仲良し父娘だ。」

「えー。じゃあやっぱり、あーちゃんはオレとラブラブの夫婦になろうよ。」

「えーと…。できれば兄と妹で…。」

「…そっか、弟の嫁だから義理の妹かぁ。義理の妹ならまだチャンスあるかな。」

(結局そこ?!)

「タクミ、ごちゃごちゃうるせぇ、さっさと始めるぞ。」

「ハーイ、父ちゃん。」

心強い二人に囲まれて、レナは心が温かくなるのを感じた。

(ヒロさんも、タクミくんも、優しいな…。)

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