新婚の定義──嘘つきな君と僕──
夕方。

ユウがリビングで無造作にギターを弾きながらぼんやりしていると、玄関のドアが開いた。

(帰ってきた…。)

夕べのレナの様子を思い出し、ユウの胸はイヤな緊張感にしめつけられた。

リビングのドアが開き、レナが姿を現す。

「ただいま。」

「あ…おかえり。」

「今日、休みだったの?」

「いや…昼間に少しだけスタジオに行った。」

「そうなんだ。お腹空いた?」

「うん。」

「夕飯まで待てる?」

「あ…うん。」

レナはバッグを置いて、髪をひとつにまとめ、手を洗ってキッチンに立つ。

「ユウ、今日の夕飯、何か食べたい物ある?」

レナは笑ってユウに尋ねる。

「なんだろ…特にないな…。」

「それじゃあ、早くできるからハヤシライスでいい?」

「うん。」

「急いで作るね。」


ユウは、キッチンに立つレナの後ろ姿を、いぶかしげに見つめた。

(なんだこれ…?普通すぎて、逆にわけがわからないんだけど…。昨日の夜のレナって、一体何だったんだろう?)



レナはユウに背を向け、キッチンで米を研ぎながら、自分はユウの前で、いつも通りうまく笑えているかとドキドキしていた。

(ユウ、変に思ってないかな?)

夕べあれからユウと別の部屋に寝たきり、今朝は顔を合わせていないので、ユウが何を思っているのか心配していたけれど、レナはヒロに言われた通り、普段通りの自分を演じる。

(ユウ、どう思ってるだろう?気になる…。)


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