新婚の定義──嘘つきな君と僕──
レコーディングを終えたレナは、ヒロとタクミに誘われ、バーに足を運んだ。

ユウのことが気になりながらも、敵に回すと怖い二人に笑顔で威嚇されると、断ることができなかった。

(遅くなるってメールだけでもしとこう…。)

レナはスマホを取り出しユウに短いメールを送った。



食事をしながら、レナはヒロに勧められたお酒を飲んだ。

ヒロのお気に入りの恐ろしくキツいジンライムを、レナはなんの疑いもなく飲み続ける。

2杯目のジンライムを飲み干した頃、レナはぼんやりとした目で頬杖をついた。

(なんか…ぐるぐるする…。)

「なんだ、もう酔ったのか?」

「ヒロさんのジンライム飲んだら、普通は1杯目の半分も飲まないうちに酔いますよ。」

タクミはレナを支えるように背中に腕を回す。

「そうか?」

「そうです。」

レナは頬杖をついて目を閉じた。

(ユウ…どうしてるかな…。)

“レナ、愛してる”と、 優しく笑うユウの顔を思い浮かべながら、レナは涙を流した。

「あーっ、またあーちゃん泣かせた!!」

「オレじゃねぇだろ?!」

レナは、ぐるぐる回る頭で、ポツリポツリと呟いた。

「過去なんて…知らなくてもいい…。今の…私だけが知ってるユウが…私の好きな…私だけのユウだから…。」

静かに涙を流すレナの頭を、ヒロは優しく撫でた。

「ユウは誰よりもレナを想ってる。ただ少し、優しさを履き違えてるだけだ。」

「ユウは…私には…特別、優しい…。」

そう呟くと、レナは頬杖をついたまま眠ってしまった。

ヒロは優しい目でレナを見ると、レナの頭を抱き寄せ、何度も頭を撫でた。

「レナはいい子だな…。」

眠りの中で、レナは優しく頭を撫でてくれるユウの姿を思い浮かべていた。

(嘘つきな私でも…ユウは愛してくれる…?)


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