新婚の定義──嘘つきな君と僕──
レナは午前中、画像のデータを整理したり、新しい仕事の資料を見たりしながら、みんなが出払った事務所の留守番をしていた。

お昼が近くなった頃、レナがコーヒーをいれようと立ち上がった時、事務所のドアが開いた。

(誰か戻って来たのかな?それにしては早いけど…。)

ドアの方に視線を向けると、そこにいたのは須藤だった。

「須藤さん!」

「おうレナ、元気でやってるか。」

「ハイ…相変わらずです。」

曖昧な返事をして作り笑いを浮かべるレナを見て、須藤は小さくため息をつきながら微笑む。

「ホントに相変わらずだな、レナは…。」

「え?」

須藤の言葉の意味がよくわからず、レナは首を傾げた。

「相変わらず、嘘つくのが下手だ。」

「えっ…。」

すべてを見透かすような須藤の目にはかなわないと、レナは苦笑いを浮かべる。

「それでも、嘘つかなきゃいけない時もあるんです。」

「守らないといけない物があるからか。」

「そうですね…。それもあります。」

「そうか…。自分に嘘ついてでも、自分を奮い起たせて、自分の足で踏ん張らなきゃならん時もあるからな。嘘も通せば誠になるって言葉もある。オレはレナに騙されたフリで、その行く末を見守るかな。」

「ハイ。もし下手な嘘に気付いても、上手に騙されたフリをしてて下さい。」

「なかなか言うようになったね、オマエも。」

須藤は笑みを浮かべて、愛しそうにレナを見つめた。

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