新婚の定義──嘘つきな君と僕──
`アナスタシア´用の写真撮影を終えると、レナはメイクさんにいつもの撮影用の薄化粧を落とされ、今までにしたことのないような、元々ハッキリとした顔立ちを更に強調するような、濃い目のメイクを施された。

生まれて初めてのつけまつげや、目元を際立たせるアイメイク。

鼻筋の通った顔立ちをよりシャープにみせるシャドウやチーク。

普段使ったことのない、深い赤の口紅に、唇をふっくらと艶めかせるリップグロス。

いつもはストレートの長い髪をヘアアイロンで巻かれ、あっという間にくるくると小悪魔っぽい巻き髪にされた。

(だ…誰…?!)

レナは今までに見たことのない、いつもとはまったく違う自分の姿に、まるで自分ではないような違和感を覚えた。

(これが、変身!!…ってやつ?)

日本人とアメリカ人のハーフと言うこともあり元々ハッキリした顔立ちを、いつもはできるだけ派手にならないよう、薄化粧をしているレナが、メイクや髪型を変えるだけで別人のようになっている。

(…ちょっとは色っぽくなってるのかな…?)

色気のなさがコンプレックスのレナは、鏡の中の別人のような自分の姿をしげしげと眺めた。

(いや…やっぱりないな…。)

どんな格好をしても、自分は自分でしかないと改めて思う。

(作り物の私、かぁ…。)

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