新婚の定義──嘘つきな君と僕──
レナが言った言葉のどちらが本当で、どちらが嘘なのか。

もし、ユウと離れていた間に他の男と付き合っていた話が本当だとしても、それは仕方がないことだと思う。

レナが誰かに恋をしていた過去があっても、それを責める権利なんて誰にもない。

実際自分だって、たくさんの女の子と関係を持った。

レナのいない寂しさを埋めて欲しくて、レナの夢を見せて欲しくて、相手なんか誰でもいいと誘われるがままに体を重ねた。

自分の方がずっといい加減なことをしてきたのだからレナの過去を責めるつもりなんてない。

ただ、どちらが本当だとしても、レナがユウに嘘をついたのは事実だ。

ユウは、それが一番悲しかった。

そして自分にも、レナに隠したい過去がある。

レナに責められた時も、後ろめたさで何も言えなかった。

一生会うことのない人間の話をされるだけならともかく、過去に関係を持った相手が今、すぐ近くにいると言う状況は、不安にならない方がおかしい。

もしかしたら過去に関係があったかも知れない男や、レナを本気で狙っているかも知れない男と、二人で会ったり飲みに行ったりしていることを夫である自分が責めるのは、いけないことだろうか?

過去がどうであれ、今は自分の妻なのだから、自分だけを見て欲しい。

他の男の所へなんか行かせたくない。

他の誰よりも、自分を愛して欲しい。

(世界にオレとレナの二人だけなら…って、昔よく思ってたな…。他の男にレナを奪われる心配も、レナがオレ以外の男を好きになる心配もなくて…。結局、オレってあんまり成長してないんだな…。)

ユウは苦笑いを浮かべてビールを飲み干す。

(世界に二人だけなら…オレがレナ以外の女の子を抱くことも、そのせいでレナを不安にさせることも、なかった…。)

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