新婚の定義──嘘つきな君と僕──
その後、仕事に追われながらも別の女性との恋愛をいくつか経験してきた。

ずっとレナを好きだったとか、そういうわけではないが、大学を卒業して8年も経って、偶然仕事でレナと会えた時は嬉しかった。

ただ、レナと`ALISON´のユウの熱愛報道や、週刊誌を賑わせた騒動も、レナの出演したファッションショーと“私にはユウしかいない”と言い切ったインタビューも、その後二人が結婚したことも知っていたから、レナが幸せならそれでいいと思っていた。

(あの時…あんな無防備に寂しそうな顔して…マジで、旦那から奪って…連れ去ろうかと思った…。)


相川は、レナの顔をじっと覗き込む。

「幸せそうな顔してるな。」

「そんなにじっと見ないでよ…。」

恥ずかしそうに目をそらすレナを見て、相川は苦笑いを浮かべて小さく呟いた。

「いつでも責任取ってやろうと思って、ヤケ酒の誘い待ってたのにな…残念だ。」

「何それ…。相川くん、私の嫌がることはしないんじゃなかったの?」

「オレとじゃ嫌か?」

「前にも言ったでしょ。そういうの、セクハラ発言って言うんじゃないの?」

「キツイねぇ…。」

「それに私、ユウ以外の人とは、考えられないから。」

レナが微笑んで小さく呟くと、相川は優しく笑った。

「そうか…。幸せなんだな。」

「うん…。」

「キレイになるわけだ…。」

相川は満足そうに呟くと、また目を閉じた。

(旦那のことが、好きで好きでたまんねぇんだな…。今まで見た中で、今日のレナが一番キレイだ…。あの時、衝動だけでレナの幸せを壊すようなことしなくて良かった…。)


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